下向きの犬のポーズ。休むポーズと言われて休めない理由

ポーズの解説

太陽礼拝の流れの中で、何度も戻ってくる下向きの犬のポーズ。「ここで一息つきましょう」と言われても、手首はつらく、肩は重く、脚の裏はつっぱって、とても休めているとは思えない。この記事は、そんなふうにこのポーズをきついと感じている、ヨガを始めたばかりの方に向けて書いています。

結論。休めないのは、体重が手か足のどちらかに偏っているから

先に、私の考えを書いておきます。

初心者の方がこのポーズをきついと感じるのは、多くの場合、手首や肩に体重がかかりすぎているか、あるいは足が伸びきっていないか、そのどちらかだと私は見ています。どちらか片方に体重がかかりすぎると、体はそこを支えることで手一杯になり、休めていない状態になります。

両手と両足、四つの点にバランスよく体を預けてみる。そして肩をしっかり入れて、体を突っ張る。これができると、このポーズは休めるという感じに変わってくると、私は思っています。

形を整えることよりも先に、体全体のバランスと、突っ張る感覚を味わってみてください。この記事で伝えたいのは、ほとんどそれだけです。

自宅のヨガマットの上に素足で立つ場面

下向きの犬のポーズとは

下向きの犬のポーズは、両手と両足を床につき、お尻を高く持ち上げて、体を横から見たときに三角形、あるいは逆さまのVの字のような形をつくるポーズです。サンスクリット語では「アド・ムカ・シュヴァーナーサナ」と呼ばれることが多く、「下を向いた犬」というような意味だと説明されています。犬が前脚を伸ばして伸びをする姿に似ていることから、この名前がついたと言われています。

太陽礼拝の中では、前屈や板のポーズ、コブラのポーズなどの間をつなぐ位置に置かれることが多く、流れの中で何度か戻ってくる「拠点」のような役割を担っています。そのため、クラスによっては「休むポーズ」「呼吸を整えるポーズ」として紹介されることもあるようです。

ただ、始めたばかりの方にとっては、ここが流れの中で一番きつい場所になることも少なくありません。休むと言われているのに休めない。このずれが、ポーズへの苦手意識につながっていくのだと思います。

きつさの正体は、体重のかけ方にある

このポーズのきつさは、筋力が足りないから、体が硬いから、というだけの理由ではないと私は考えています。むしろ、体重がどこにかかっているか、その偏りが大きいように感じます。

手首や肩に体重がかかりすぎている

よく見られるのは、上半身に体重が寄っている状態です。お尻が十分に持ち上がらず、体が前のめりになると、体重の多くが手首と肩に乗ってきます。手首は本来、長い時間大きな体重を受け止めるようにはできていないと言われていて、ここに負担が集まると、ポーズを保つこと自体がつらくなります。

肩も同じです。上半身の重みを肩だけで受け止めていると、首のまわりまで力が入り、呼吸も浅くなりやすくなります。

足が伸びきっていない

もう一つは、下半身の側がうまく体を受け止めていない状態です。足が伸びきっていないと、体重を脚の方へ逃がすことができず、結果として手の方に重さが戻ってきます。

ここで一つ、誤解のないように書いておきます。「足が伸びきっていない」というのは、膝をまっすぐに伸ばしきらなければいけない、という意味ではありません。脚の裏側が硬い方が無理に膝を伸ばそうとすると、背中が丸まり、かえって手の方に体重が寄ってしまうことがあります。

膝は軽く曲げていて構いません。かかとが床につかなくても構いません。無理のない範囲で膝をゆるめ、お尻を高い位置に保つことの方が、四点のバランスをとるうえでは役に立つように私は感じています。脚が伸びていく感覚は、そのあと少しずつ育てていけばいいものです。

片方に偏ると、体はそこを支えるだけで手一杯になる

手の側でも足の側でも、どちらか片方に体重がかかりすぎると、体はそこを支えることに精一杯になります。支えるのに忙しい場所があると、そこから呼吸も乱れていきます。これが、休むポーズと言われて休めない状態だと私は捉えています。

ヨガマットを両手で巻いている場面

四点に預けて、肩を入れて突っ張る

では、どうすれば休める感覚に近づけるのか。私が大切にしているのは、次の二つです。

両手と両足の四点に、体をバランスよく預ける

まず、両手と両足の四つの点に、体重を分けて預けてみてください。手だけで支えようとしない。足だけで踏ん張ろうとしない。四つの点が、それぞれ同じくらいの役割を持って床を押している状態を探します。

最初からぴたりと均等になることはないと思います。少し手に寄りすぎている、少し足に寄りすぎている、と行き来しながら、真ん中あたりを探っていく。それで十分です。

肩をしっかり入れて、体を突っ張る

次に、肩をしっかり入れて、体を突っ張ります。

「肩を入れる」というのは、私の言い方では、肩が耳の方へすくみ上がらず、腕と胴体がひとつながりになって床を押している状態のことです。そこから手で床を押し、その力をお尻の方へ、さらに足の方へと伝えていく。手と足の間で体が一本の線になり、つっかえ棒のように突っ張る。この感覚を、私は「体を突っ張る」と呼んでいます。

突っ張ることができると、手首や肩だけで重さを受け止める必要がなくなります。体全体が骨組みのように自分を支えてくれるので、その分、力を抜ける場所が生まれます。休めるという感じは、たぶんこの「力を抜ける場所」から来ているのだと思います。

力を入れて突っ張るのに、休める。言葉にすると矛盾しているようですが、実際にやってみると、この二つは同時に起こります。

手首に痛みがある方へ

手首に痛みや違和感がある方は、無理にこのポーズを続けないでください。痛みがある状態で体重をかけ続けることは、おすすめできません。

指を大きく開いて手のひら全体で床を押す、手の下にたたんだタオルを敷いて角度をやわらげる、膝を床について四つ這いの形で休む、といった工夫が紹介されることがあります。それでも痛む場合や、痛みが続く場合は、ポーズを休み、必要に応じて医療機関に相談してください。ヨガは、痛みを我慢して続けるものではないと私は考えています。

自宅でできる最初の一歩

太陽礼拝の流れの中で練習する前に、このポーズだけを単独で試してみるのもひとつの方法です。

  1. 四つ這いになり、両手を肩の真下より少し前に、両膝を腰の真下に置きます
  2. 指を開いて手のひら全体で床を押し、つま先を立てます
  3. 息を吐きながら膝を床から離し、お尻を斜め上へ持ち上げます。膝は曲がったままで構いません
  4. 手と足の四点のどこに体重が乗っているかを、ゆっくりと感じてみます
  5. 肩を入れて、手から足の方へ体を突っ張ります
  6. 数回、呼吸を繰り返したら、膝を床に下ろして休みます

最初の数回は、形よりも「いま、どこに重さが乗っているか」を確かめるつもりでやってみてください。手に寄っているなと感じたら、お尻を少し後ろへ。足に寄りすぎていると感じたら、手で床を押し直す。この小さな調整を繰り返しているうちに、四点がそろう瞬間が少しずつ見つかっていくと思います。

太陽礼拝の全体の流れについては、別の記事でもまとめています。下向きの犬のポーズは、その流れの中で何度も帰ってくる場所です。ここで少しでも休めるようになると、流れ全体の感じ方も変わってくるのではないかと私は思っています。

年配の男性が自宅でヨガマットを整えている場面

休めるポーズは、つくっていくもの

下向きの犬のポーズは、最初から休めるポーズではないのかもしれません。四点に体を預けること、肩を入れて突っ張ること。その感覚が体に入ってきたときに、はじめて休める場所になっていくのだと、私は考えています。

ぜひ、体全体のバランスと、突っ張る感覚を味わってみてください。

自分の体重がどこに乗っているかは、一人でやっていると意外と分かりにくいものです。誰かと同じ流れの中で同じポーズをとってみると、その感覚が少し掴みやすくなるかもしれません。

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画像: Pexels

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