子どものポーズが伝えてきたもの。休むことと、戻ること

ポーズの解説

ヨガのクラスの途中で、何度か挟まれることの多い「子どものポーズ」。動きが小さく、形も難しくないため、休憩のためのポーズとして紹介されることが多いものです。けれども、このポーズには、もう少し深い意味合いが伝えられてきました。この記事は、ヨガを始めたばかりの方や、力を抜くのが苦手な方に向けて、子どものポーズの捉え方をやわらかく整理するためのものです。

結論。子どものポーズは「休む」ではなく「戻る」ためのポーズ

子どものポーズ(サンスクリット語でバーラーサナ)は、単に身体を休めるためだけのポーズではないとされています。伝統的には、子どもがお母さんのお腹の中にいるときの様子を模した形だと言われており、自分が一番安全で、安心だった時間に、身体ごと戻る体験を表すポーズとして受け継がれてきました。

「休む」よりも「戻る」。
言葉を一つ入れ替えるだけで、ポーズの感じ方が変わることがあります。

自宅でマットを敷き、子どものポーズをとる女性

子どものポーズの形と、よくある誤解

子どものポーズの基本的な形は、次のように説明されることが多いようです。

  • 膝を床につき、お尻をかかとの上に下ろす
  • 上半身を前に倒し、額をマットに近づける
  • 腕は身体の横に下ろすか、前方に伸ばす
  • 呼吸はゆっくりと、鼻から行う

形だけを見ると、シンプルです。
そのシンプルさゆえに、いくつか誤解されやすい点があります。

誤解1: 休憩のポーズだから、何でもいい

休憩のポーズだから、適当でいい——そう思われがちですが、骨盤の角度や姿勢の整え方で、ポーズの質はかなり変わると言われています。

誤解2: 完全に力を抜くポーズ

「力を抜きましょう」と案内されることが多いため、完全脱力のポーズだと受け取られやすいのですが、実際には、抜いていく部分と、保っておく部分があります。

誤解3: 初心者向けの簡単なポーズ

形は簡単に見えても、ポーズの中で何が起きているかを感じ取るのには、少し時間がかかるものです。「簡単」と「浅い」は、必ずしも同じではありません。

誤解4: ただうずくまっていればいい

うずくまる形と、子どものポーズの形は似ていても、別物だと言われています。前者は身体を縮める形、後者は身体を預けながら整える形。入り口の意識が違います。

心と体の二層構造。預ける部分と、保つ部分

子どものポーズについて考えるとき、心と体を二層に分けて見てみると、輪郭が掴みやすくなります。

心の側で起きていること

  • 子どもに帰る
  • 一番安全で安心だった時間に戻る
  • シンプルな自分のところへ戻る
  • 赤ちゃんになった気持ちでポーズに入る

心の側は、できるだけ預けていきます。緊張や思考を、ゆっくりと降ろしていく時間です。

体の側で起きていること

  • 全身を床に投げ出すのではない
  • 骨盤の位置を意識し、少しだけ立てる
  • 上半身は前に倒すが、姿勢が崩れすぎない範囲で
  • 額や胸を、無理のない位置まで近づける

体の側は、最低限の姿勢を保ちます。「ただ預ける」のではなく、「預けながら支える」。

心は預けて、体は支える

二つを同時に成り立たせるのが、このポーズの面白いところだと言われています。心の力みは抜いていきながら、体の側には小さな支えが残っている。完全脱力でも、頑張りすぎでもない、その中間に着地するポーズです。

力みやすい人にこそ、入り口の言葉を変える

普段から力が抜けにくい人、無意識のうちに頑張ってしまう人にとって、「ただ休む」ことは、意外と難しい行為だと感じられることがあるようです。頭で「休もう」と決めても、身体はまだどこかで構えている。そういう経験は、多くの人にあるのではないでしょうか。

そんなとき、「赤ちゃんに戻る」という入り口の言葉は、使える場合があります。

「休む」と言われると、何かを止めなければいけない感じがします。
「戻る」と言われると、もともとあった場所に降りていく感じがします。

私自身、最初はこのポーズを、ただの小休止だと受け取っていました。クラスの合間に挟まる、形の優しいポーズ。それだけのもの。けれども、「赤ちゃんになった気持ちで入る」というアプローチに切り替えてみたところ、ポーズの中での体感が、少しずつ変わっていきました。体がぐっと、シンプルな自分のところへ帰っていくような感覚。「休む」の意味が、身体的な休息だけでなく、心の原点に戻る時間へと、少し広がった気がしました。

判断のレベルで言えば、これは私の個人的な見方です。ただ、力みやすい人ほど、入り口の言葉を変えると、ポーズの中で起きることが変わることはあるように思います。

室内でチャイルドポーズに入る様子

ヨガの長い歴史の中で

ヨガは2500年以上の歴史を持つと言われ、その長い時間のなかで、数えきれないポーズが伝えられてきました。子どものポーズも、その一つです。形が単純なポーズほど、伝えられてきた背景には複数の意味が重ねられていることが多いとされています。

「身体を休める」「内臓を緩める」「呼吸を深くする」といった機能的な側面が語られる一方で、「安心の起点に戻る」という体験的な意味合いも、長く伝えられてきました。ポーズに込められた意味を、ひとつの言葉に絞る必要はありません。今の自分に届く意味を、その時ごとに受け取れればよいのだと思います。

自宅で試すときの、最初の一歩

自宅で子どものポーズを試してみるときに、参考にできる進め方を、いくつか挙げておきます。

  1. 場所を整える。マットがあれば敷きます。なければ、厚手のタオルやラグの上でも構いません。床が硬すぎないことが大切です。
  2. 膝立ちから始める。膝を床につき、両膝を骨盤の幅、もしくは少し広めに開きます。
  3. お尻をかかとへ。ゆっくりと、お尻をかかとの上に下ろします。かかとに乗るのが苦しい場合は、お尻とかかとの間にクッションを挟んでも構いません。
  4. 上半身を前へ倒す。腰から折り曲げるのではなく、骨盤から前に倒れていくイメージで、額をマットへ近づけます。額がつかなくても問題ありません。手の甲やクッションを額の下に挟んでも大丈夫です。
  5. 骨盤を「少しだけ」立てる。完全に預けきるのではなく、骨盤の位置を少しだけ意識します。「ただ崩れ落ちる」のではなく「預けながら支える」を、身体の中で探します。
  6. 呼吸をゆっくりと。鼻からゆっくりと息を吸い、ゆっくりと吐ききります。3〜5呼吸ほど、その場にとどまります。

最初から長く保つ必要はありません。短い時間でも、ポーズに入って、また起き上がる。そのリズムだけ掴めれば、十分です。

読者の状態を観察する

ここまで読み進めて、いかがでしょうか。

形を理解することと、自分の身体でその感覚に届くことの間には、すこし距離があります。子どものポーズは、本や動画で形を見るだけでは、「子どもに帰る」感覚までは届きにくいポーズかもしれません。誰かに見られながら動く必要はありませんが、同じ時間に、誰かと一緒に呼吸を合わせる場があると、ポーズの中で起きていることが、少し伝わりやすくなることがあります。

オンラインで、一緒に動く時間があります

オンラインで、一緒にポーズを取る時間が週に3回あります。日曜の75分、水曜の朝と夜にそれぞれ30分。画面越しに、同じ呼吸と動きを共有する、無料のクラスです。自宅から、マット1枚あれば参加できます。詳細と登録は free-yoga-japan.com から。


画像: Pexels

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