腰が痛い。だから、ヨガのように体を動かすものは自分には無理かもしれない。そう思って、始めるのを先送りにしている方に向けて書いています。
先に、この記事の立ち位置を置いておきます。ここで扱うのは、ヨガで腰痛を治す方法ではありません。まず痛みを知ること、そして痛みの根本がどこにあるのかを、体の中で探していくこと。腰痛と向き合うときに取っているのは、この順番です。治るか治らないかを先に決めてしまうより、この順番のほうが、体と長く付き合っていくうえでは続けやすいと考えています。
「治す」ではなく、まず痛みを知る
腰痛という言葉を使うとき、多くの場合そこには「早く消したい」という気持ちが含まれています。当然のことだと思います。痛みは日常を削るものですから、消したいと願うのは自然な反応です。
ただ、この記事で扱うアプローチは、そこから少し離れたところにあります。基本的に、治すというところを目的にしていません。まずは、痛みを知ってみる。どこが、どんなときに、どんなふうに痛むのか。前に曲げたときなのか、立ち上がる瞬間なのか、朝なのか夕方なのか。それを観察するところから始めます。
そのうえで、痛みの根本はどこにあるのだろう、と体の中を順に探していきます。腰が痛いからといって、原因が腰にあるとは限りません。長く座り続けたことで固まった股関節かもしれませんし、片側だけに重心をかけて立つ癖かもしれない。探していくうちに、腰以外の場所に手がかりが見つかることがあります。
痛みを消す対象としてだけ扱っていると、この観察は始まりません。痛みを、体からの情報として一度受け取ってみる。それが最初の一歩になります。
その場の緩和と、根本へのアプローチ。二層で向き合う
腰痛への向き合い方は、二層に分かれています。
ひとつは、その場での痛みの緩和です。腰が痛いときは、腰をさすってあげる。温める、休ませる、姿勢を変える。こうした一時的なケアには意味があります。痛みが強い状態では、体は防御して余計にこわばりますから、まず和らげることは無駄ではありません。
もうひとつは、それを引き起こしている根本原因、つまり筋肉や骨へのアプローチです。疲労なのか、使い方の偏りなのか、過去の怪我の影響なのか。こちらは時間のかかる層です。数日でどうにかなるものではなく、月単位で付き合っていくことになります。
この二層を分けて考えられると、混乱が減ります。さすって楽になったのに翌日また痛むのは、当たり前のこと。一時的なケアは根本の層には届いていないからです。逆に、根本に向き合い始めたからといって、今日の痛みがすぐに消えるわけでもない。別々の層に、別々のやり方で向き合っていく。ヨガを通してやっているのは、この両方です。

腰だけを徹底的に、という向き合い方が遠回りになる
腰痛のときに避けたい動きについては、はっきりとした考えを持っています。
ひとつは、腰痛を治そうとして無理に動くこと。もうひとつは、腰だけを徹底的に行うことです。
腰が痛いのだから腰をなんとかする、という発想はとても自然です。ただ、体は部分ごとに独立して動いているわけではありません。腰は、背中とも、お尻とも、太ももの裏とも、股関節ともつながっています。腰につながる筋肉や足のほうを重点的に伸ばしていくと、結果として腰の状態が変わってくる。実感としては、こちらのほうが手応えがあります。
体全体を通して整えていく、という言い方をしています。痛む場所だけを集中的に動かすのではなく、その場所に負担をかけている周囲を、ゆっくりゆるめていく方向。動きとしては地味で、変化も静かです。それでも、腰だけを酷使する方向よりは、無理が少ない道だと考えています。
なお、どの動きを避け、どの動きを取り入れるかは、腰痛の原因によって変わります。ここでポーズを名指しして処方することはしません。判断が難しいときは、レッスンの場や、体を診てもらえる専門家に個別に相談してください。
痛みが強くなった経験と、そこで引く線
ここからは、この媒体を書いているShinpei自身の経験です。
座る仕事をしていた時期があり、重いものを持つ仕事もしていました。その頃、腰が少し歪んでいる感覚がありました。そこでヨガを始めたところ、腰の痛みは、いったんさらに強くなりました。
これを、元からあった痛みが、体が調整されていく過程で表に出てきたものだったと解釈しています。ただし、これはあくまで個人の振り返りであって、他の人にそのまま当てはまるものではありません。ここは、はっきりと線を引いておきます。
痛みが増す、鋭い痛みが走る、しびれが出る。こうした状態のときは、続けずに医師や専門家に相談してください。「悪化しても続けていればそのうち良くなる」という考え方を、この記事は勧めていません。痛みの背景には、自分では判断できないものが隠れていることがあります。それを見分けるのは、体を診てもらえる人の仕事です。
無理に動かない。腰だけを酷使しない。この二つは、ヨガと腰痛について語るときに一貫して置いている前提です。踏み込む勇気よりも、引く判断のほうが大事になる場面があります。
専門的な治療と、自分で整えることは両立する
Shinpeiは、マッサージや整骨に通うことだけを続けても、腰痛との付き合いは終わらないだろうと考えています。根本的に、自分の体を鍛え直したり、筋肉をつけたり、筋を伸ばしたりしていかないと、おそらく難しい。これはあくまで個人の見解です。
ただ、この見解は、施術や医療を否定するものではありません。急な痛みを和らげてもらうこと、原因を診てもらうこと、専門家の手を借りること。それらには、自分ひとりではできない役割があります。
専門的な治療を受けることと、自分で体を整えていくことは、並べて行えます。前者は、今この痛みに対処する層。後者は、その痛みを生んでいる使い方に向き合う層。先ほどの二層と、そのまま重なります。どちらかを選ぶ話ではなく、両方を持っておく話です。
体は、これから先ずっと使い続けるもの
ヨガはおよそ2500年、あるいはそれ以上の歴史を持つとされ、ポーズを中心とするハタヨガの体系が整ったのは8世紀ごろと言われています。伝統的には、体を整えることは、それ自体が目的というより、長く座り、呼吸を深め、心を静めていくための土台として位置づけられてきたとされています。
つまり、その場の不調を消すことだけを目的とした技術としてではなく、これから先も使い続ける体を、手入れしながら持たせていくための積み重ねとして伝えられてきたということ。この視点は、腰痛と向き合ううえでも意味があると考えています。
体は、これから先ずっと付き合っていくものです。取り替えることはできません。だとすれば、治るか治らないかという二択で考えるより、この体と一緒に今からできることを積んでいくほうが、現実的です。Shinpeiが腰痛を持つ方に最も渡したいのは、この視点です。
自宅でできる、最初の一歩
もし今日ひとつだけ試すとしたら、動くことではなく、知ることをおすすめします。
床か椅子に、楽な姿勢で座ります。背骨だけを軽く上に伸ばして、あとは息をゆっくり吐ききる。そのうえで、腰のどのあたりが、どんなときに反応するのかを観察します。前に少し倒したとき。左右に軽くねじったとき。動かす幅は、痛みの手前まででかまいません。むしろ、痛みが出る手前で止めることが、この時間の目的です。
そして、腰だけでなく、太ももの裏やお尻のあたりに硬さがないかも、静かに確かめてみてください。腰に出ている痛みの手がかりが、そちらにあることは少なくありません。
動きは小さくてかまいません。体が硬くても問題ありません。ここでやっているのは、鍛えることでも伸ばすことでもなく、自分の体の状態を知ることだからです。
ここまで読んでくださった方へ
腰痛を理由にヨガを先送りしている方は、おそらく「腰が良くなってから」と考えています。ただ、この体とこの先ずっと付き合っていくのだとすれば、整うのを待ってから始めるより、痛みを抱えたままの体で、今できることから始めるほうが自然かもしれません。
マットも特別な服も、まずは要りません。free-yoga-japan.com で開いている週3回のオンラインクラスは、自宅から参加できて、無料です。痛みのある日は動きを小さくしても、途中で休んでも、体を横にしていてもかまいません。
画像: Pexels

